歯科恐怖症への対応 (2002.3.29掲載)
歯科治療時や来院時に異常なほど怖がり、恐怖症状を示すお子さんがいます。そのお子さんの性格もありますが、保護者が日ごろからぐずった時に「歯医者さんで注射してもらうよ」と言ったり、小さな虫歯のうちに治そうと3歳未満の子を無理に治療したりすると、子どもは歯科恐怖症になりやすいようです。
「お母さんは歯を磨かない子は嫌い」などは子どもを歯磨きに導く効果的な言葉ですし、低年齢では初回から削るよりもさまざまな指導から始めてくれる、子どもに慣れた歯医者さんの方がお薦めです。虫歯は14、15歳までは出来やすいので、慌てて削るよりも予防処置や指導、定期的に検診を受けることが必要です。
歯科恐怖症になったら、治療を急がず、少しずつ慣れるようにしながら、自信を回復させることが大切です。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
障害のある子の場合 (2002.2.22掲載)
歯磨きや歯を削ったり詰めたりすることが困難な障害を持っているお子さんでも、食生活の管理さえできれば簡単に虫歯を防ぐことができます。それは主に砂糖の摂取回数を減らすことがポイントだと既に述べましたが、詳しくは小児歯科医院で定期健診を受け、そのお子さんに適した予防方法の指導をしてもらいましょう。低年齢から管理を受けて、歯は健康そのもののお子さんはたくさんいます。
虫歯ができても強制的な方法で急いで治療をしてはいけません。他人に口の中を自由にさせることは本能的に嫌なものです。歯科医がそのお子さんとじっくり信頼関係を作り、楽しい痛くない治療をすることです。大切なのは保護者の熱意が1番。削るのではなく虫歯を防ぐことが2番。そんな指導をし、痛くない治療を心がけてくれるかかりつけの歯科医を持つことが3番です。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・野々村榮二)
定期健診で虫歯激減 (2002.1.25掲載)
先進国では虫歯が減少し、自分の歯で一生食べられる人が増えています。しかし、日本はそうではありません。その理由はさまざまですが、虫歯予防のための定期健診が普及していないことが大きいのです。例えば、フィンランドでは72年に子どもの歯の定期健診が義務付けられ、妊娠した女性にも子どもの虫歯の予防教育があります。その結果、30年前は日本より虫歯が多かったのに、今は激減。欧米でも低年齢のうちから予防のため小児歯科医院を定期的に受診し、成人になっても歯の手入れを欠かさない人が多くいます。
一方、日本でも虫歯予防のため小児歯科医院で定期健診を受ける子どもが増えてはいます。しかし、治療だけを希望する人も依然多い。虫歯は予防が一番です。もっと多くの子どもたちが予防のため定期健診を受けて欲しいものです。虫歯の途上国は嫌ですよね。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・野々村榮二)
虫歯は遺伝する? (2001.12.28掲載)
虫歯がミュータンス菌などの感染症だということはよく知られてきました。しかし、それでも虫歯は遺伝の病気だとあきらめている人がいます。確かに親子で虫歯が多い家族や少ない家族がいますが、それは環境遺伝といえます。つまり、おやつの買い置きがある▽おやつを頻繁に食べる▽ジュース類をよく飲む▽歯磨きをあまりしない━などの悪い習慣が親子で継続しているのです。
小児歯科では虫歯の発生状況から悪い習慣のチェックもしてくれます。虫歯の多いお母さんは、砂糖の摂取回数が少ない良い習慣や考え方をぜひ子どもに伝えて、子どもだけでなく孫や代々の健康を守りましょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
歯並び良くするには (2001.11.30掲載)
楽しい人生を送るためには健康であることが一番です。また外見も美しい方が良いに越したことはありません。そこで歯並びもきれいに、との希望が増えています。しかし、小学校低学年までは、虫歯を防ぎ、乳歯から永久歯にうまく生え変わらせることや、歯を取り巻く骨や筋肉の正常な発育を考えていけばよいでしょう。上の前歯が4〜6本生えたら、専門医でそろそろ歯並びの診断をする時期です。小児歯科医院では、虫歯や歯並びを含めて定期的に管理・健診してくれます。早くから治療を必要とするケースは意外と少ないものです。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
小児の専門医とは (2001.10.26掲載)
虫歯のない、美しい歯並びの大人になるようにするのが小児歯科です。そのためには定期健診をするのが最良の方法です。転宅や転勤になった場合は、全国小児歯科開業医会(JSPP)所属の先生であれば全国にネットワークがあり、近くの小児歯科を紹介して定期健診を継続できます。JSPPのホームページ(http://www.jspp.net/)に小児歯科医の名簿を掲載しています。また、大阪小児歯科専門医臨床研究会のホームページでは、小児歯科医の紹介や歯の質問も受け付けています。定期健診を実施▽JSPPの会員▽日本小児歯科学会認定医▽子どもを多くみている−などを満たしていれば小児歯科専門医と考えてよいでしょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
指しゃぶりの影響 (2001.9.28掲載)
「指しゃぶり」は幼いお子さんに多い習癖です。「つめをかむ」「タオルをかむ」も気持ちを落ち着かせる習癖としてよく見られます。
しかしいずれも年齢とともにしなくなります。中にはあまりにもきつくしゃぶったりかんだりする場合や、4歳を過ぎても続く場合に、歯並びが異常になり、歯の矯正治療が必要になる場合もあります。歯並びが異常になっても、習癖がなくなると異常も自然に治ることが多いのです。したがって、4歳以下では温かく見守ってあげ、無理な方法でやめさせることはしない方が心理的にも好いと思われます。心配な場合は小児歯科医の診察を受け、相談に乗ってもらうのが良いでしょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・道家臻)
口からの感染症 (2001.8.31掲載)
夏になると病原性大腸菌O157の感染が増えます。これは比較的新しい感染症で、このほか手足口病も70年に日本に入ってきた感染症です。地球の温暖化や多様なペットの飼育、あるいは国際化により、新しい感染症が増えています。子どもやお年寄りなど体力の弱い人から発病するので、小児歯科でもいつも気をつけて診察しています。
口には「食べる」「息をする」という外からの栄養と酸素を取り込む大切な役割があります。それに伴って細菌やウイルスも口から侵入します。虫歯や歯周病も口の中の細菌による病気ですが、歯磨き、うがい、手洗い、食生活などを気をつけることで感染を防ぐことができます。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・大橋健治)
6歳臼歯大切に (2001.7.27掲載)
平均的には5歳半から6歳ごろ、前から数えて6番目にはえてくる永久歯が、第一大臼歯とも呼ばれる6歳臼歯です。永久歯の中でも一番かむ力が強く、特にこの歯を虫歯にしなければ、老後まで一生食生活を楽しむことができるといえます。
ても、ほとんどの人が歯がはえてから2年以内に虫歯を作ってしまいます。この歯が生える前から虫歯にならない食生活を心がけることが大切です。そして6歳臼歯が生えてきたら早く見つけ、すぐにこの歯用の特別な歯磨きの指導(口角磨き・つま先磨きなど)や、フッ素塗布・シーラント予防処置などを数年間、定期的に歯科医院で受けましょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・吉見正樹)
定期健診とは (2001.6.29掲載)
小児歯科などの定期健診の主な目的は、早期に予防指導や処置を3〜5カ月に1回行い、虫歯を作らないことです。病気の有無をチェックし、治療が必要かどうかを判定する公的検診(学校検診など)とはまったく性質の異なるものです。虫歯がない状態を維持するための定期健診は公的検診と併用して続けていきましょう。また、公的検診の結果と主治医の見解が異なる場合は、十分説明を聞いたうえで主治医の見解を優先させるのがよいでしょう。
14〜15歳を過ぎると虫歯はできにくくなりますが、歯肉炎の予防や歯並びの治療時期になります。正しい歯ブラシの仕方なども定期検診で身につきます。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・大塚隆英)
“子ども専門”とは (2001.5.25掲載)
小さな子どもの治療は一つ間違うと泣いたり、暴れたりと子どもはもちろん歯科医にとっても大変。来院を拒否し、痛くなったり、顔がはれたりするまで治療にこなくなることもあります。
子どもは日ごろから定期検診を受け、虫歯の予防とともに歯科に慣れておくことも大切になります。子どもに慣れた歯科医院では、3歳以上になると麻酔やラバーダム(口に装着する安全なゴム)を使用して、理解と信頼に基づいた痛みの少ない楽な治療をすることができます。「子ども専門の歯科医院」とは、いろいろと声かけをし、子どもの自主性や興味を引き出しながら治療をすることができる医院です。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・野々村榮二)
歯を強打した時は (2001.4.27掲載)
子どもは予期せぬ事故で歯を強く打つことがあります。
@歯が抜けた
A歯が折れた
B歯が埋まった
C歯が揺れている
D歯の位置がずれた
E歯の色が黒くなった
F唇や歯肉が切れた
などです。でも、慌てず、騒がず、あきらめずに子ども専門の医院を訪ねてください。
特に@やAの場合はその歯を牛乳などに浸して、できるだけ早く持参してください。
いずれの場合も適切な処置により、元の状態に復元することもできます。
また、大人の歯に影響しないように処置することが大切です。
ラグビー、空手など激しいスポーツをするお子さんにはマウスガードを作り、外傷を未然に防ぐようにしましょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・外村誠)
弱い歯を重点的に (2001.3.30掲載)
ムシ歯になりにくい強い歯にするには、低年齢でのバランスの取れた食生活が大切です。でもどんな歯も生えてから2年間は弱くて危ないので、3、4カ月に1回、フッ素塗布や生活指導などの健診を子ども専門の歯科医院で受けましょう。
歯ブラシ、フロスなどで丁寧に磨く必要のある弱い歯は、1歳半までは上の前歯、1歳半から4歳までは奥の歯のかむ面、6歳ごろからは6歳きゅう歯です。仕上げ磨きもこれらの歯だけで十分です。
ほ乳瓶で砂糖入りの飲み物を飲ませる▽寝る直前に砂糖入りの飲食をさせる▽ガムやアメをよく食べさせる・・・・。ムシ歯を作る必殺技です。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
“甘食”の回数減らす (2001.2.23掲載)
子どもの年齢によってムシ歯のできる歯が違います。隅から隅まで磨くより、危ない歯を重点的にムシ歯になる原因を除くのが科学的で楽な予防方法です。子ども専門の医院に行けば、お子さんの危ない歯や原因の除き方を教えてくれます。
原因は砂糖入りの飲食物。1回の摂取量でなく、1日に何回摂取するかが問題。
1回の量を多めにしても回数を減らして。何度にも分けて食べられるスナック菓子や買い置きの砂糖入り飲み物が危険。砂糖を含まないものを最後に飲食させれば最良です。牛乳や果物は大丈夫、辛い菓子でも砂糖を含めば危険です。おやつは補食。栄養のバランスも考えて夕食まで腹持ちする量を。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会・岡本誠)
まずは予防が大切 (2001.1.26掲載)
ムシ歯の主な病原菌のミュータンス菌が最近、世界的に力を弱めています。今後は少しの努力でムシ歯なしで一生を過ごせそうです。
子ども専門の歯科医院では、口の中の細菌の力を測ったり、効果的なムシ歯の予防法を指導しています。
ムシ歯は@子どものときが最もなりやすく、大人になるとあまりならないA一度なると健全な歯には戻らず、加齢と共に障害がひどくなる−といえます。
子どもの間はまず予防が大切です。「甘いものを食べるな。歯を磨け」は古い方法。もっと科学的な予防法を次回に述べます。
親は21世紀を生きる子どもに「ムシ歯なし」の贈り物をあげましょう。
(大阪小児歯科専門医臨床研究会)
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